20年ぶりの再会を求めて・・・
調査も場数を踏むと幾度となく感動的な現場に遭遇する。
今回の第一回「探偵ドキュメント」の事例もその一つである。
昨年、ゴールデンウイーク前の週末、私は一本の電話を受けた。
幼さを含んだ若い女性の声で「お父さんを探してほしいのです!」
と今にも泣きそうに語りかけてきた。
この女性(T子)は私にその事情を話し始めた。
T子さんが物心ついた頃には「両親二人と共に生活する幸せな
家庭に育っていた」と言う。何不自由なく育てられていたが、
T子さんが小学校に入学した頃、妹が生まれた。 妹の誕生により
父の態度は明らかに妹寄りに変化した。しかし父の態度にも我慢
の限界を超える事はなく、 T子さんは順調に育ち20歳になり、
友人と海外旅行に行く事になった。パスポート取得の為、役所に
出向いたT子さんは戸籍の父親の欄に全く知らない男性の名が
記されており、現在の父とは「養子縁組」の関係である事を知った。
その後、T子さんは母親を追及したが、母親は何一つ答えようとは
しなかった。12歳になった妹を名門中学校に入れると躍起になって
いる現在の父親、そして何一つとして過去を語らない母親を見るうちに、
T子さんの中で何かが動いた。
意を決してT子さんは海外旅行を取りやめ、実の父親探しに出向く
事になった。T子さんと接触した私は調査を開始。
まず、T子さんの生まれた地を訪れ、T子さんの了解を得た上で
聞き込みを実施した。すると予想もしない噂が流れて来た。
「T子さんの父親は母親よりも20歳ぐらい年上でT子さんが
生まれた時には50歳近かった。だからT子さんの事を
相当かわいがっていた」
「しかしT子さんの母親は、T子さんが生まれて半年程度で家を
飛び出した。 どうやら若い男が出来たらしい」
「T子さんの父親は病気がちで、出て行く妻を引き止める事も
出来ない状態だった。妻が家を出た後も入退院を繰り返していたが、
今から10年程前には引っ越しして、その後は分からない」
これらの情報を伝えた時、T子さんは、うつむいたまま顔をあげようと
しなかった。
そして「お父さんは生きてますかね?」と尋ねてきたT子さんの
表情からは、母親や現在の父親に対する怒りなどは一切無く、
「ただ、実の父親に逢いたい!」という切実な感情がよみとれた。
私は黙ってうなずき、すぐに父親を探す為に事務所を出た。
「生きていてくれよ」という願いを持って。
・・・ つづく
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